家訓風土記「佐渡島とトキのお話し」

 

 

 

 

 

 

 

『トキに選ばれた島、佐渡』

  

景観10年、風景100年、風土1000年

 

風土という字は、「風」と「土」と書きます。日本の各地に残る風土は、人間と自然の共生してきた歴史です。いま、日本の風景が劇的な変化をみせています。どこにいっても、見慣れたチェーン店が並び、ご先祖さんが1000年かけてつくった風土が、わずか数10年で、跡形もなく消え去ろうとしています。

司馬遼太郎さんは、「龍馬は土佐の風土、西郷は、薩摩の風土でしか育たなかった」と指摘しています。風土とは、大地だけを指すものでなく、我々、人間もまた風土の一部なのです

 

家訓を広めるため全国を旅する家訓二ストも、様々な風と土を感じてきました。故郷の風土は、その場所、その季節でしか味わえないものです。美味しいものは、東京にしかない、あるいは、ネットであれば何でも手に入る。というのは錯覚です。

あなたは、あなたの食べたもので出来ている。そして、地域の「豊かさ」があなたを育みます。自分の両足で大地に立ち、「土」が生み「風」が育てた故郷の味を信じる時代が今まさに求められています。

 

 

今回、訪問させていただいた佐渡島では、トキの放鳥がはじまっており、平成20年から計12回、約100羽が、自然での生活を始めています。自然化での繁殖も成功し、群れをなして大空をとぶ姿は雄大そのもの新しい景色をつくっています

トキは、かつては日本列島の全域にすみ、学名は、Nipponia nippon。まさに日本を代表する鳥です。しかし、乱獲と環境の変化に順応できずその数を激減。さいごの生息地となった佐渡島では、保護活動むなしく平成5年に日本うまれの最後のとき「キン」がなくなり、以後、中国のトキを借り受け個体数を増やす取り組みをつづけています

 

かつては、日本中、どこにでもいたトキは、日本の風土のなかで育まれた鳥でもありました。トキが好むたべものは、ドジョウやタニシ。人里の近くに巣をつくるそうです。つまり、森がふかい山奥でなく、人里でしか生きられなかったことが、トキを絶滅においやりました

 

トキを死においやったものはなんでしょう?

 

日本の自然は、自然にできたものでなく、ひとの営みと共にできた風景です。たとえば、里山の雑木林は、草刈や間伐をすることで、こんもりとした林になっていきます。人間とて自然の1つ。一説には縄文時代から、こうした営みを続けてきたともいわれています

 

トキを絶滅させたものは、ご先祖さんが数千年かけつくってきた「風土」を壊した報いです。山があり、川があり、里山があり、先祖より数千年かけて培ってきた自然との共生が、戦後わずか数十年で、なくなってしまったのです

佐渡島では、トキが生活できる環境をまもるために農薬をつかわない、原始的な農業に変換しています。また、一般的な島と違って、水田が豊富にあるのも島の特徴です。トキが最後に残った佐渡島は、日本中どこにもあった里山の風景を守ってきた証だったのかもしれません

 

相対性理論で有名な科学者アインシュタインは、不気味な予言をのこしています

「ミツバチが絶滅したら人類は4年で滅ぶ」と。多様な食物連鎖の中では、1つの種の絶滅は、想定外の問題を引き起こすことが指摘されています。トキを守る取組は、生態系を守る取組であり、また人類を救うミッションでもあります。

 

トキを守る活動は、日本の風土を守る取組です。

トキに選ばれた島「佐渡」。この島には、豊かな自然だけでなく、人々の営みと共に、古くて新しい光景がひろがっています。トキが舞う島の風土が、島に住む素敵な人たちによって守り育まれること、そして、100年、1000年かけて、トキが舞う豊かな風景が、日本中どこにでもある風土になることを夢想します。

 

今回、残念ながら野生化でのトキをみることができませんでした。観光客でも、トキを見れる人は多いようですが、家訓二ストの日頃の行いが悪かったのでしょう(^_^;)

これからも家訓の旅をつづけ、徳溢れる男になり、いつか再訪する日には、トキに選ばれる男に成長していることを約束します。


トキみたかったな(*_*)