老舗大国日本の秘密~なぜ老舗が多いのか?~

画像:柴沼醤油さま外観(創業元禄元年 300年ごえです)
画像:柴沼醤油さま外観(創業元禄元年 300年ごえです)

世界中で創業200年以上の老舗といわれる会社が多い国はどこか御存知ですか?

 

答えは、日本。

約3000社の老舗が今も全国で営業を続けています。2位のドイツが800社という数字をみれば桁違いに多い数です。ちなみにアメリカさんは14社。3000年の文明を誇る中国には3社しか存在してません。

 

では、なぜ日本にだけこれだけ多くの老舗が残ったのか? 新幹線での移動中に家訓ニストなりの答えをまとめました。老舗大国、日本の秘密をランキング方式で発表させていただきます。

 

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1位 「必要とされてきた」

 

企業がつづく・・・ということは、つぶれないということ。つぶれるということは、市場から必要とされなくなったというメッセージです。 老舗をつくる一番の要因は「必要とされてきた」と分析できます。

 

近江商人には、「三方よし」という家訓が伝わっています。

曰く、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という内容です。

 

お客様から、【必要とされる】ことはもちろん、世間からも【必要とされる】という精神が多くの老舗を日本に誕生させ、またそんな精神が経済大国、日本の発展、そして平和をも担ってきたものと家訓ニストは考えます。江戸時代の商慣では、なんと法人税、消費税をはじめとする、間接税の支払い義務はありませんでした! そのかわり、「公」をになうことを求められ、本来行政がになうべき公共事業を民間が受け持っていました。

多くの商人が集った大阪では、八百八橋といわれた橋、それぞれスポンサーとなる商人が架け替えやメンテナンスまで担当していたそうです。三方よしの精神の「世間よし」の精神は、日本が誇る財産なのではないでしょうか?

 

道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である(二宮尊徳 意訳)
 
「世の中に必要とされる」ために、努力を続けてきた多くの老舗企業は日本の財産です!
 
 

2位 「従業員は家族である」

 

アメリカで、リーマンショック後、経営危機に陥った大企業の経営者の姿が舞う姿が報道されました。救済をもとめる議会での公聴会の席にも自家用ジェットで現れ、「今すぐジェットを売り救済にあてるべきなのでは?」という指摘にも、不敵な笑いを浮かべるばかりで結局、身銭をきることはありませんでした。

 

グローバルスタンダードを押し付けるアメリカさんは、「身銭をきる」という発想はありません。法人と個人は別人格であり、あくまでそれは「契約」なのです。

そもそも、企業とは最小限の投資で、最高の利益をめざすもの。つまり儲からない会社を続けさせる利点は1つもありません。なので、長く商売をする前にさっさと店じまいをしてしまう・・・そんな点からも老舗が少ないことを指摘できます。

 

長い長い老舗の歴史。まちの和菓子屋さんから、竹中工務店、住友グループのような上場企業まで、共通項は、最初はどこも家族経営だった・・・という事実です。

いまや世界中に何十万人もの社員を抱えるトヨタグループも、始まりは、父ちゃん、母ちゃんで、始めた商いです。

創業者である豊田佐吉さんが遺した遺訓の中で、「家庭的に美風」を残すことを指示しています。事実、トヨタや、松下など昭和を代表する経営者は、戦争直後をはじめ経営危機をむかえた場面でも、絶対に従業員の整理をしませんでした。それは経営者と従業員という関係をこえた信頼であり、法人を「家族」としてとらえる「ジャパニーズスタンダード」なのです。

 

日本の中小企業のおっちゃんは、売上が下がると当たり前のように田畑屋敷をうり、生命保険をも解約してまで、従業員の給料を払い、あるいは取引先への支払いにあてます。

つまり、「グローバルスタンダード」の考えでは、企業とはあくなき利益をもとめるもの。しかし、「ジャパニーズスタンダード」は、「浪花節」。つまり、利益でなく、取引先、従業員さんとの「情」を大事していることがわかります。未曾有の景気減退で我慢しきれなかった会社さんも多かったのも事実ですが、赤字の時期を耐え、経済が上向くのをまつ「我慢」ができるのも老舗企業が多い理由なのではないでしょうか?

 

金にうるさく、こずるいおっちゃんもいますが、おしなべて日本の中小企業の社長は、えらいものなのです。

 

従業員を家族のように扱うからこそ、働く皆様も、安心して丁寧な仕事をする環境が生まれます。

丁寧につくるだけでなく、ひとりひとりの創意工夫が、「良い商品」として市場に受け入れられていきます。

結果、経営者も、従業員も、商品を手にするお客様、ひいては、世間全体が、幸せにつつまれる!のが、日本の商いです。

世界では、だまし、だまされるのが、商売の基本。だからこそ信用する相手を見極め、契約書をかわします。しかし、老舗企業の少なさをみるとその商いの方法では早かれ、遅かれ限界はくるようです。

 

3位 「軸がある」(社訓がある)

老舗企業の4割に家訓があり、口伝まで含めると8割の会社に伝えられてきた「教訓」があるそうです。

時代の中で得策をとっているつもりでも、長いスパンでみると失策であることはよくあります。たとえば、バブルの時代、多少無理しても、土地を買うことが勝ち組の必須条件でした。しかし、バブルは破たんしました。

そんな中でも、老舗といわれる住友、三菱といった財閥系の銀行はいち早く業績を回復させました。理由はグループのなかに立ち戻る依り代があったこと。つまり先祖代々つづく「家訓」がバブルの傷を最小限にとどめ、次の時代の飛躍をも担ったのではないでしょうか?

 

とくに住友家は、ロスチャイルドをこえる世界最古ともいわれる財閥です。その歴史は実に400年。

関ケ原の戦いが1600年ですから、天下をかけ戦国武将がチャンバラしている時にはすでに「商い」を開始していました(*_*) 逆にいうと400年分の教訓が、「住友」にはあるわけです。日本GDPの10%をになうとも言われる住友系の会社だけピックアップしても、老舗企業がつづけるあくなき挑戦の歴史が、そのまま日本の歴史となっていることを家訓ニストは断言します。

 

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教科書には決して乗らない日本の商いの歴史。

しかし、老舗企業の歴史を学ぶことで、たとえ生まれたての若い企業でも、未来の老舗になるために、「いま」しなくてはならないことが見えてきませんか!?

 

まずは、三方よしの精神。「売り手よし、買い手よし、世間よし。」

そして、従業員は家族である精神。

さいごに、絶対にぶれない軸。家訓、社訓をつくりましょう

 

老舗と言われる企業も、出発は、個人商店であり、また挑戦者(ベンチャー)でした。

それは、今まさに起業を考えるあなたと同じ立場であり、老舗も挑戦者も、日々新しきを習う、毎日の積み重ねなのです。

 

「いま」を大切し、明日のために今日何ができるか? 

凡事を徹底した1日が、1年になり、10年になり、そして100年と、積み重ねた時、「老舗」が誕生するのです。

 

ぜひ老舗企業の皆様は、その歴史を明日につなげ、そして、若い企業にお勤めの皆様は、御社が未来の老舗になるよう日々を紡いでいってください。

 

日本は、創業200年をこえる会社が3000社ある老舗大国です。

 

そして日本は、世界180か国の中、建国の歴史が最も古い国でもあります。

老舗の企業が、世の中に必要とされ、歴史を紡いできたように、日本も、世界に必要とされてきた尊い国であることを誇り、そしてこの歴史を、「あいさつをする」「ひとに迷惑をかけない」あるいは「靴をそろえる」。日本人が受け継いできた「凡事」を徹底していくことで、未来を創っていきましょう!

 

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